26歳の冬の話 2

とある人間の記録

続きです。

前回の話はこちらから。

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報せ

いつの時も報せというものは唐突にやってくる。

一人暮らしにも少しずつ慣れ、交友関係も広がり始めた初冬のころであった。その日も仕事を終え、日課になっていた晩酌も終わり、ひと通りの片付けも済んだ夜であった。妹からの電話である。

家族と疎遠という訳ではなかったが、特段、言うべきこともなければ連絡もしない家族であったため、電話が来ることそのものが驚きであった。何かあったのか、しかも平日の夜に。

妹の声はかすれていた。声を発することもつらそうな、絞り出すような声であった。

かすかに聞こえる声から、病院を出たところだと言うことは分かった。何があったのか、事実だけ話すように励ました。

なんとか言葉を搾り出そうとしている。電話越しでもわかる有様であった。

父が末期のガンだとわかったと。今その病院の帰りだと。

なにがなんだか分からなかった。悪い冗談だと思った。なんと言えばいいのか、分からなかった。

とりあえず帰って、寝るように。今絶対に事故だけはあわないように。それだけ言って電話を切った。それしか言えなかった。

姉への連絡はこちらがした。これ以上、妹に辛い思いをさせられない。姉も言葉を失っていた。

とりあえず、直近の休みに帰省して対応することにした。次の行動だけ決めないと発狂しそうだった。

なぜ?今の状態は?発見に至る経緯は?分からないことだらけだった。

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今回は「報せ」という章題でした。書きながらの更新になるので不定期になるかもですが、最後まで書き上げるつもりなので、どうかお付き合いください。

ではまた。

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