26歳の冬の話 3

とある人間の記録

続きです。

前回の話はこちらから。

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異変と報告

どんな時も朝は来るものだ。昔に誰かが言った言葉としては認識していた。

まるで昨晩の出来事が嘘かのように朝は来た。ほとんど眠れなかった。詳細を知りたかった。原因や悪い部分はどこなのか。医者が末期ガンと判断し、手術などがあればすでにやっているだろうに、それでも知りたかった。知ってもどうにもならないのに。

出勤の時間が迫っていた。休むわけにはいかなかった。ただでさえ、これから休む日が増えるだろう。会社に向かった。

あの日はいつもと変わらぬ、晴れた日だった。そして空は、いつも以上に澄み渡って見えた。何も変わらないはずだというのに、異様な孤独感だけはいつもと違っていた。こんなにも変わって見えてしまうものなのだろうか。変わったのは自分だけなのではないかと思うほどに。

虚無感というべきか、孤独感というべきか。初めて体験したあの感覚は、いまだに言葉での表現に困るものであった。感じたままに表現するのであれば、「いつもと同じ街並みなのに、とても広大に感じ、自分ひとりしかいないような」感じがした。

始業後、早々に教育係の先輩を小さい会議室に呼んだ。今までその先輩を会議室に呼び出すようなことは一度もなかった。きっと先輩も虚をつかれたことだろう。

先輩には本当に良くしてもらった。何も知らない新卒の社会人に対し、嫌な顔をせず、一から教えてくれた。そんな先輩だからこそ、嘘も誤魔化しもしたくなかった。

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今回は異変と報告の前編でした。後編は次回です。当時は現実味がなかったみたいですね。書き起こしてみると改めて思います。

続きます。

ではまた。

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